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 ドラマが見える名人戦

 いやあ、すごいことになりましたね。いま森内×郷田の名人戦第六局の結果を公式ページで見たばかりです。プロの将棋で、名人戦という舞台で、それでもあんなことが起こるとは(名人戦という舞台だからかな?)。 一応説明すると、今期名人戦は森内名人に対して郷田九段が挑戦者に名乗りを挙げました。森内名人はあと一期名人を保持すれば永世名人。同じく永世名人にリーチがかかっている羽生三冠は順位戦中盤で脱落。正直、羽生より先に森内が永世名人になるのはどうなんだ?というファンや周りの疑問は森内さん本人もわかっていたと思います。とはいえそれは勝負の世界ですから全力を出すのは当然。そんな空気に負けるようでは名人の資格はないとしたもんです。で、これまでの結果二連敗後に三連勝。リーチをかけての今回の第六局は序盤から中盤、終盤まで終始森内ペースで進んで、九割九分永世位を掴みかけたのが下の場面。


 とりあえず王手がかかっていて、銀を使ってはダメなので逃げる一手。逃げ場所は二つ、後手玉は必至。そもそもずっと勝ちでどう決めるか、という場面でこの局面を選んだのだから先手必勝の局面です。ちなみに、逃げ場所二つのうちどちらも詰みません。森内名人はおそらくもう終わったつもりで、4七を選びました。以下5八角成、3八玉。


 なるほど、確かに詰まない。しかし、ここですでに森内名人の勝ちはなくなっていました。郷田九段の4六桂がまるで作ったかのような一手。


 森内名人がこの手に気付いたのはいつだったのか。3八玉を指した後か、最後まで気付いてなかったのか。予想ですが、おそらくこの手を知ってはいたが2八玉で勝ちだと思っていたんじゃないかと思います。なにせ今まで一つも負けの局面がなかった将棋です。どうやっても勝ちだという心境だったんじゃないでしょうか。しかし、ここからはまるでエアポケットに入ったかのように名人に勝ちはありません。とにかく王手で3六の金を抜かれてはダメ。ずっと優勢な将棋でも最後の局面は、詰まなければなんでもOKという程単純ではなかったのです。


 5三香車と打たれた局面の正解は4八玉。以下5八角成は3九玉、3八金は3七玉で詰みもなければ王手で3六金を抜かれることもありません。 これなら問題なく森内勝ち。 しかし、こんなことは考えればプロなら全員わかること。 もちろん名人にわからないはずがない。まるで七冠のときの羽生マジックを見ているようで、郷田のバックで羽生が永世名人を阻止せんと睨みを利かせてたとしか思えないような逆転劇でした。

 なんにせよ、この大逆転で名人戦は最終局の第七局までもつれこみました。見ている側としては非常に興味深い、ドキドキする展開になったといえるでしょう。しかし、もし森内が最終局を勝って永世名人になることができればこの第六局の重みは相当薄らぐことになります。逆にもし郷田九段が勝てば、この一局は森内という棋士のみならず将棋界の命運を分けた歴史に残る一局となるでしょう。以前コラムで書いた「大山康晴の晩節」でも同じようなことが書いていますが、やはり棋譜が歴史と人々の記憶に残るためにはその内容以上にその一局を取り巻く状況が大切であり、そういう意味で第七局は大逆転だった第六局の将棋の出自も分ける一局となりそうです。
 
  やはり人間には希望的観測というものがあるので、あんな負け方をしたからには森内は七局もダメだろう。そして来期の順位戦で羽生と永世位を賭けて郷田名人への挑戦権を争えば・・・なんて考えてしまうのが将棋ファンの心理じゃないでしょうか。とりあえず今期の名人戦、にわかにおもしろみと熱気を帯びてきました。これほどの大勝負、本来ならエンターテイメントとして第七局は東京ドームを丸々貸しきって客入れるぐらいするべきでしょう(でもまたどこかの旅館でひっそりとやるんでしょうねえ)。なんにせよ、第65期名人戦第七局。ドラマは生まれるのか、注目です。(2007/06/18)

 ※どうやら▲4八玉以外に▲5五金でも森内名人の勝ちで、そちらの方がさらに手堅かったようです。しかしこういった手堅い手は森内さんの持ち芸ですから、こういったところで一番間違えなさそうな森内さんが間違えたというところに名人戦という冠の大きさを感じますね。

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